【バスク現地レポ】ビスカイアのチャコリを味わう!ララベツ村で春のワイン祭り

バスクの春は美食とワインの祭りが目白押し!

春のバスク地方は、美食とワイン好きにはたまらない季節。中でも注目なのが、バスクの伝統的な地ワイン「チャコリ(Txakoli)」を楽しむ地域密着型のイベントです。

今回は、バスク三大チャコリ特産地のひとつ「ビスカイコ・チャコリーナ」が生まれる、ビスカイア県の**ララベツ村(Larrabetzu)**で開催された「チャコリの日」を現地からレポートします!

ララベツ村とは?バスクの自然と伝統が息づくワインの村

ビスカイアの県都ビルバオから車で20分ほどの美しい谷あいにあるララベツ村。三つ星レストラン「アスルメンディ」と高品質チャコリで知られる「ゴルカ・イサギレ」のワイナリーがあることでも有名です。

イベント当日はあいにくの雨模様。でも、バスクの人々にとっての雨はイベントを止める理由にはなりません。会場の広場にはチャコリと食の色とりどりのブースが並び、この時期にマストのバスク・シードルと、祭りにかかせないタロの屋台も。

地元の音楽隊による演奏とともに、地元の人や、バックパック姿のサンティアゴ巡礼路の巡礼者など、訪れた人たちが思い思いにお祭りを楽しんでいました。

チャコリの試飲方法:グラス片手にワイナリーブース巡り

「チャコリの日」では事前予約は不要。入口でララベツ村のロゴ入りグラス(1.5ユーロ)を購入し、そのグラスを持って好きなブースを自由に巡って試飲するスタイルです。

料金はワインやピンチョスの種類によって異なり、その都度支払います。

今回は、ビスカイア県のチャコリ産地の中の「チョリエリ地区」から8ワイナリーが出店。スパークリング、樽熟成、赤チャコリまで、通常では出会えないような幅広いチャコリが試飲でき、まさにワイン好きにはたまらないイベントです。

ララベツ村チャコリの祭り エントランス
ワイナリーブースの様子

生産者に出会える!地元の風景とワイン文化が融合した空間

「昔、ブドウ農家が自家製のチャコリを友人たちにふるまっていた」――そんな伝統が今も息づく雰囲気で、会場はまるでその時代にタイムスリップしたかのよう。
各ブースではチャコリだけでなく、チーズ、アンチョビ、オリーブ、生ハム、タロ(バスクの屋台グルメ)など地元の味覚がずらり

まるでそれぞれの生産者の家に招かれたような温かさを感じます。

印象に残ったおすすめワイナリー3選

🔸ゴルカ・イサギレ

イベントが開催されたララベツ村の三ツ星レストラン「アスルメンディ」敷地内にある有名ワイナリー。試飲したスタンダードチャコリは、洗練された酸味とバランスが秀逸。黒のユニフォームで統一されたブースのスタッフもスタイリッシュ。統一された世界観です。

ゴルカ・イサレギのスタンダードチャコリ ボトルとグラス

🔸マガラルテ・レサマ(※日本未輸入)

レサマ村にある家族経営のワイナリー。国際的なワインコンクールの受賞歴もあり。
通常のチャコリのほか、ことなる熟成方法で作られた白チャコリや、スパークリングワインなど多彩なラインナップ。
マグナムボトル (通常の2倍サイズ&熟成がゆるやかに進む) からの試飲というのも贅沢。
希少な赤チャコリも試飲。フレッシュな果実味が広がりボジョレー・ヌーボーのような気軽さがありますが、ほどよい酸味とスパイシーさが赤チャコリらしい。ベーコンたっぷりのタロといただきました。

マガラルテ・レサマ バリック熟成チャコリ ボトルとグラス
マガラルテ・レサマ 赤ワイン グラス
ベーコンのタロ

🔸マガラルテ・サムディオ(※日本未輸入)

サムディオ村にある代々続く家族経営のワイナリー。環境に配慮したブドウ栽培と、地元で消費されるワイン作りに取り組んでいます。
ラベルにひかれて最後に試飲。たくさんのワインを試飲したあとでしたが、あまりの美味しさに思わず目が覚めました。
特に「マガラルテ・サムディオ 2021」はバリック (小樽) 熟成による厚みや複雑さ、クリーミーさ、ミネラル感といった要素がムルソーを彷彿とさせます。輸出はされていませんので、現地に行った際はぜひお試しください。

マガラルテ・サムディオ 2022ビンテージ バリック熟成 ボトルとグラス
マガラルテ・サムディオ アレチャバレタ 2021ビンテージ ボトルとグラス

ゲタリア産 vs ビスカイア産チャコリ:飲み比べのススメ

チャコリには3つの原産地呼称(D.O.)がありますが、二つのイベントで「ゲタリアコ・チャコリーナ(D.O. Getariako Txakolina)」と「ビスカイコ・チャコリーナ(D.O. Bizkaiko Txakolina)」のチャコリをまとめて試飲したので、比較した結果を簡単にまとめました。

特徴ゲタリア産ビスカイア産
発泡性微発泡ほぼなし
香り白い果実・柑橘・ハーブより複雑、白い果実・花・柑橘・ハーブ
酸味しっかり、爽やかやや穏やか
口当たり軽やか、ピリッとした刺激丸み、余韻が長い
アルコール度数9.5~11.5%程度10.5~12%程度

軽快なタイプがお好きならゲタリア産、より香りと味わいに複雑を求めるならビスカイア産がおすすめ。どちらも飲み比べて、その違いを楽しむのがチャコリの醍醐味です。

おすすめのグラス

二つのイベントで出されたグラスは、大きさがこんなに違います。グラス選びでワインの味わいも変わります。

左はゲタリアで出されたもの。小さめのグラスは温度が下がりにくく、繊細な香りや味わいを逃しにくいので、フレッシュで爽やかなゲタリア産チャコリにピッタリ。

右は今回ビスカイアで出されたもの。大きめのグラスでは、空気にふれやすく温度もやや上がることで、より複雑な香りとコクのある味わいを楽しめます。主にビスカイア産やアラバ産のしっかりした味わいの白チャコリ、そして赤チャコリやロゼにもおすすめです。

ゲタリアコ・チャコリのイベントのグラスとララベツ村イベントのグラス

地元グルメも大充実!バスクの味覚を食べ歩き
ワインと一緒に楽しめる地元グルメ

ガスタ・サアラ
祭りに出店しているパンの屋台の様子
ヒルダ
一般的なヒルダ

グラス片手にちょこちょこ食べ歩く楽しさは、まるでバスク流のバル巡り。

まとめ:チャコリの向こうに見える、生産者の努力と誇り

このイベントで最も心に残ったのは、チャコリというワインの向こうにいる生産者の姿
今回のイベント当日も雨でしたが、ここは本当に雨と湿気が多い地域。最近は気候の変動も大きく、この容赦ない自然を相手に、毎年一定の品質、生産量を保つのは大変な仕事です。
3つの原産地呼称の違いを超えて協力し、日々研究や技術革新にいそしんでいる生産者のその情熱が、私たちのグラスに注がれる一杯につながっているのだと実感しました。

次回予告:アラバのチャコリを巡る旅へ

バスクのチャコリ三大産地、次はいよいよアラバのチャコリ、「アラバコ・チャコリーナ」へ。
内陸ならではのより厚みのある味わいと、またひと味違う文化をご紹介します。お楽しみに!