はじめに

このブログでは、バスク地方のワインと美食に焦点を当てた情報を発信しています。
「バスク地方は美食で有名と聞くけれど、実際にはどんな料理があるの?」「旅行の予定があるけれど、何を注文したらいい?」——そんな疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
星付きレストランや“ピンチョス”という言葉を耳にしても、どんな料理なのかイメージしにくいですよね。バスク料理の特徴や代表的なメニュー、食事のスタイルを知っておくことで、現地での楽しみ方は何倍にも広がります。
この記事では、バスク在住10年以上の筆者が、現地ならではの料理や文化、そしてその魅力的な楽しみ方をご紹介します。
ブログ内で紹介しているワイナリー情報や街歩きガイド、レシピなどとあわせて、バスク美食の入り口としてお役立ていただければ幸いです。
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バスク料理の魅力とは?
バスク地方は、北に海、南に山を抱え、海の幸・山の幸の両方に恵まれています。そのため、新鮮で質の高い食材が豊富に手に入ります。
バスク料理の最大の特徴は、「素材を生かす」こと。オリーブオイルや塩を中心にしたシンプルな味付けで、魚や肉、野菜本来の旨味を引き出すスタイルは、和食にも通じるところがあります。

スパイスはほとんど使わず、風味づけにはニンニクや唐辛子、パセリなどが一般的。市販のソースやドレッシング類はあまり使われず、家庭料理でも自然な味わいが大切にされています。
地域によって料理に違いがあり、「山のバスク」では肉料理が中心なのに対し、「海のバスク」では魚介料理が豊富。旅先での食体験をより楽しむためにも、地域ごとの特色を押さえておくと良いでしょう。
絶対に食べたい!バスク地方の代表料理
■ ピンチョス(Pintxos)
小さなパンや串に魚介・肉・野菜などをのせた一口サイズの料理。バル文化の中心で、特にサン・セバスティアンが有名。複数のバルを巡って楽しむのが定番スタイル。

■ バカラオ・アル・ピルピル(Bacalao al Pil-Pil)
干しダラを、オリーブオイルとニンニクでゆっくり煮て乳化させた「ピルピルソース」で仕上げる伝統料理。タラの旨味と、ソースのとろみが絶妙。

■ チュレタ(Txuleta)
骨付き牛肉を炭火で焼いた豪快なステーキ。しっかりした噛みごたえとジューシーな脂が魅力。バスク産牛肉はEUの地理的表示保護制度(PGI)にも認定されており、シードラと一緒に楽しむのが定番。

■ ココチャス(Kokotxas)
タラやメルルーサの下あご肉を使った希少部位の料理。ピルピルソースやサルサ・ベルデ(パセリとニンニクのグリーンソース)で仕上げるのが一般的で、独特のとろける食感が特徴。

■ チャングロ(Txangurro)
蟹の身をタマネギ、ピーマン、トマトと炒め、ワインやブランデーで香りをつけてから蟹の甲羅に詰めてオーブン焼き。濃厚な味わい。
地域別の代表料理
バスク自治州(スペイン側)
■ マルミタコ(Marmitako)
カツオやマグロ、ジャガイモ、ピーマンなどを煮込んだ温かい漁師料理。材料の魚が旬の夏に、よく食べられます。

ナバラ州
■ ピキージョの詰め物(Pimientos del Piquillo Rellenos)
ナバラ特産のまろやかなピキージョ(赤唐辛子、赤パプリカ)に、魚介や肉類、ベシャメルソースを詰めてオーブン焼きに。赤く鮮やかな見た目と、甘みのある味わいが特徴。

■ ミガス・デ・パストール(Migas de Pastor)
パンくずをソーセージやニンニクと一緒に炒めた、ピレネー山脈の羊飼いたちの素朴な料理。香ばしくてクセになる一品。

フランス側バスク地方
■ ピペラード(Piperade)
パプリカ、トマト、タマネギ、卵で作る優しい味わいの煮込み料理。「piperra(甘い赤唐辛子)」が語源で、ほんのりピリ辛がアクセント。

バスク発祥のスイーツもお忘れなく!
■ バスクチーズケーキ(Tarta de Queso)
サン・セバスティアンの人気バル「La Viña」で誕生し、世界中に広まったバスク発祥のチーズケーキ。表面は香ばしく焼き上げられ、中はとろっと濃厚。ベイクドともレアとも違う新しい食感です。

※レストランのデザートでは、ベリーソース付きのレアチーズケーキや、スタンダードなベイクドタイプが多いですが、現地ならではの「焦がしチーズケーキ」はぜひ一度味わいたい逸品。
■ ガトー・バスク(Gâteau Basque)
クッキーのような生地でクリームやジャムを包んだ、バスク地方の伝統菓子。スペイン側ではカスタードクリーム入りが主流、フランス側ではブラックチェリーやアーモンドクリームが定番。サクッとした食感と優しい甘さのバランスが絶妙です。

番外編:バスクの伝統チーズ
■ イディアサバルチーズ(Idiazabal)
バスク地方の山岳地帯で作られる、羊乳を使ったチーズ。濃厚でコクのある風味が特徴で、薄くスライスしてそのまま食べても、ピンチョスに添えても美味。ワインやシードラとの相性も◎。
■ ロンカルチーズ(Roncal)
ロンカルチーズは、ナバラ自治州のピレネー山脈のふもとで作られる、羊乳を使った風味豊かなチーズです。
同じくスペインの羊乳チーズ「イディアサバル」と比べると、より濃厚でミルク感がしっかり感じられるのが特徴。
地元ナバラ産の赤ワインと合わせれば、チーズの旨味がさらに引き立ちます。
バスク料理に欠かせない飲み物たち
■ チャコリ(Txakoli)
バスク地方を代表する微発泡の白ワイン。軽やかな酸味とフレッシュな果実味が特徴で、魚介系の料理と相性抜群。グラスの高い位置から注ぐスタイルも名物で、見た目にも楽しい演出です。
地元では「昼からチャコリ」が定番。ピンチョスと一緒に気軽に楽しんでみてください。

■ シードラ(Sidra)
バスクのリンゴ酒。甘すぎず、キリッとした酸味とほんのり渋みのある味わいで、脂の多い肉料理やチュレタと好相性。伝統的なシードラの醸造所「シードレリア(サガルドテギ)」では、大樽から直接グラスに注ぐ体験も楽しめます。

■ モスト(Mosto)
アルコールが苦手な方におすすめのブドウジュース。優しい甘さがあり、食前の一杯におすすめ。現地のバルやカフェでもよく見かける定番ノンアル飲料です。
バスクで美食を楽しむなら、まずはこの街!
■ サン・セバスティアン(Donostia / San Sebastián)
“美食の都”として世界的に知られる街。ミシュラン星付きレストランが密集し、カジュアルなバルでもハイレベルなピンチョスが味わえます。旧市街はバル巡りの聖地。人気店は週末や夜に行列ができるため、時間帯に注意を。

代表的な星付きレストラン:Arzak、Akelarre、Martín Berasategi、Mugaritz
バル文化を体験したいなら:Gandarias、Bar Gorriti、La Cuchara de San Telmo など
■ ビルバオ(Bilbao)
伝統と現代が融合する都市。グッゲンハイム美術館で知られる一方、バスク料理の革新にも積極的です。ネオ・バスク料理のレストランや、モダンにアレンジされたピンチョスを提供するバルが点在しています。

モダンな美食を楽しめる街として進化中。観光とグルメを同時に満喫できる都市です。
■ バイヨンヌ(Bayonne)
フランス側のバスクでは、フレンチとバスク料理が融合した独自の味が楽しめます。特にバイヨンヌは生ハム(ジャンボン・ド・バイヨンヌ)でも有名。チョコレートやスイーツの専門店も多く、街歩きの楽しさが倍増します。

サン=ジャン=ド=リュズ(Saint-Jean-de-Luz)
港町らしい活気あふれる市場が魅力のサン=ジャン=ド=リュズは、地元の自慢の品が並ぶマルシェや、評判の高いレストランが点在する美食の街。フレンチバスクの温もりを感じられる、散策にもぴったりな港町です。

まとめ:五感で味わうバスクの美食体験
バスク地方の料理は、海と山の恵みを活かした素材重視のスタイルが魅力。シンプルながら深い味わいは、和食に通じる繊細さもあり、日本人の舌にもなじみやすいと感じる人が多いはずです。
ピンチョスや伝統料理、チーズやスイーツ、さらには地元のワインやシードラまで——
どれもその土地の気候・文化・歴史を感じさせてくれる「バスクらしさ」が詰まっています。
旅行の予定がある方はもちろん、食文化に興味のある方にも、バスクの美食はきっと心に残る体験になるでしょう。
ぜひ現地で、あるいは日本でも再現レシピなどを通じて、その魅力を味わってみてください。
