バスクの春の風物詩「シードレリア」
バスク地方の春といえば、リンゴ酒の醸造所「シードレリア (sidrería)」のシーズン到来。「Txotx!(チョッチ)」の掛け声とともに、大樽から勢いよく注がれる黄金色のシードラ (sidra) は、地元の人々や観光客を魅了する特別な体験です。本記事では、シードレリアの魅力と、美味しく楽しむためのポイントをご紹介します。
シードレリアとは?
シードレリア(バスク語では「サガルドテギ」)は、伝統的なバスクのリンゴ酒「シードラ」(バスク語で「サガルド (sagardo)」を醸造・提供する施設です。バスク内陸部では古くからリンゴが栽培されてきた歴史があり、中世から続くこの文化が今も息づいています。
かつては農家ごとに自家製シードラを作り、友人や近所の人々がそれぞれの農家を訪れ、異なるシードラをテイスティングして気に入ったものを購入する習慣がありました。訪問者が持ち寄った食べ物とともにその場で出来立てのシードラを味わう文化が発展し、現在のシードレリアのスタイルが確立されたのです。
「チョッチ (Txotx)」の意味
「Txotx!」は、シードラを樽から注ぐ際の掛け声。この言葉は、かつて樽の穴を開閉するために使用されていた細長い木の棒を指すバスク語に由来しています。
バスク・シードラの特徴
バスク・シードラ(Euskal Sagardoa)は辛口で、酸味とフレッシュさが特徴です。地元産のリンゴ100%を自然発酵させ、糖分や酸化防止剤、水を加えずに作られます。
- アルコール度数:5〜6%
- 微発泡:発酵で自然発生する泡の軽やかな口当たり
- 多様な風味:使用するリンゴの種類によって酸味の強いもの、フルーティーなものなど異なる味わいを楽しめます。

シードレリアでの食事体験
シードレリアでは、訪れた人々が大きな共同テーブルを囲み、シードラと共にシンプルながらも絶品の料理を楽しみます。
シードラの飲み方:樽からの注ぎ方
- 「Txotx!」と掛け声がかかったら、みんなで樽の前へ!
- 樽の口から勢いよく飛び出すシードラを直接グラスでキャッチ!
- グラスは腰の高さあたりで持ち、高い位置から注がれるシードラを受け止める。
- 空気に触れることで香りが立ち、味がまろやかに。
- 少量ずつ注ぎ、一気に飲む!
- 香りが飛ばないうちにすぐに飲み干すのがバスク流。
定番メニューとペアリング
爽やかなリンゴの風味と口当たりの良い泡はどんな料理にも合います。
- チョリソのシードル煮込み(Txorizo a la sidra)
- タラのオムレツ(Bacalao en tortilla)
- タラのピーマン添え(Bacalao con pimientos)
- Tボーンステーキ(チュレタ / Chuleta)— シードレリアの主役 バスクのシードレリアで欠かせないのが、骨付き牛肉「チュレタ」の炭火焼き。シンプルながら奥深い味わいが魅力です。
美味しいチュレタの条件:- 肉の種類:バスク産やガリシア産の長期肥育牛がベスト。
- 熟成期間:15〜30日の適度な熟成が、シードラとのバランスを最適に。
- 焼き方:炭火で表面をしっかり焼き、中はレア(「ブルー」)で提供されるのが一般的。塊のまま焼いて、最後に立てて均等に熱を入れる。
- 仕上げ:焼いた後に少し休ませ、最後にあら塩をたっぷりふって完成。

- 羊乳チーズとマルメロのジャム(Idiazabal y membrillo)— チーズの塩気とマルメロの甘味が絶妙にマッチ。
シードレリア訪問のヒント
予約とシーズン情報
- シーズン:1〜4月(通年営業の醸造所もあり)
- 1月:出来立てのフレッシュなシードラ、4月:味が落ち着き飲み頃
- 予約が必須(特に週末)
おすすめの訪問曜日
- 土曜日:賑やかでワイワイ楽しみたい人向け
- 日曜日:落ち着いた雰囲気
- 平日:予約が取りやすく、上質な肉が提供されることも
子ども連れでも楽しめる!
シードレリアの多くは広い庭や遊具があり、家族連れにも優しい環境です。子どもにはオリジナルのリンゴジュースを出してくれるところもあり大人と一緒に楽しめますよ。

おすすめのシードレリア
家族連れにもおすすめの醸造所
Petritegi Sagardotegia(ペトリテギ・サガルドテギ)(アスティガラガ)
バスク初の「ファミリーフレンドリー」認定シードレリア!
子ども向けのアクティビティが充実しており、シードラの作り方を学べる体験やキッズメニューがあります。併設のホテルも素敵です。
Igartubeiti Caserío Museo(イガルトゥベイティ・カセリオ・ムセオ)(エスキオ=イチャソ)
歴史と文化を学べる体験型シードレリア!
伝統的な食事メニューはありませんが、16世紀のバスクの農家を再現した博物館で、シードラの伝統的な製造方法を学べ、現地の人にも人気があります。子ども向けに搾りたてのリンゴジュースの試飲体験も。
質の高いシードレリア
- Zapiain Sagardotegia(サピアイン・サガルドテギ)(アスティガラガ)
高品質な地元産リンゴのみを使用し、伝統を守りながら醸造。複数の品質管理基準を導入し、持続可能な農業と有機栽培を推進しています。 - Barkaiztegi(バルカイステギ)(サン・セバスティアン)
1930年創業の老舗シードレリア!
通年営業でサン・セバスティアン市内からも簡単にアクセスできます。自家農園で育てたリンゴから作るシードラと、伝統のグリル料理が絶品。
まとめ
バスクのシードラは、単なるリンゴ酒ではなく、地域の風土や食文化を映し出す奥深い飲み物です。「Txotx!」の掛け声とともに、シードラと美味しい料理、人々との交流を楽しむひとときは、忘れられない体験となるでしょう。
バスクを訪れる際は、ぜひシードレリアでこの特別な文化を体験してみてください。
次回は、実際のシードレリア訪問レポートをお届けしますので、お楽しみに!