はじまりは春の空気とともに
バスクの冬は、低い気温としとしと続く雨が特徴。けれど、春の陽気が訪れると同時に、人々の表情も街の空気も一変します。屋外でのイベントが各地で催されるこの季節、特に心が躍るのが、バスクワイン「チャコリ」の名産地・アイア村で行われる「チャコリの日」。
軽やかで爽やかな味わいが魅力のチャコリは、屋外で賑やかに楽しむのにぴったりのワイン。その新酒を、春の空の下で自由に味わえるという、まさにこの季節ならではの魅力的なイベントです。
アイア村とイベントの雰囲気
アイア村は、ギプスコア県に位置する小さな村。丘の上にあり、谷の風景やその向こうに広がる海の景色は思わず足を止めて見入ってしまうほどの美しさです。坂道の途中に点在する伝統的な家々を抜けると、村の広場には人々の笑い声と音楽があふれ、春の陽気そのもの。

11時半の開始に合わせて到着しましたが、すでに村の駐車スペースはいっぱい。地元の家族連れから年配の方、そして外国からの観光客まで、あらゆる年齢層の人々でにぎわっていました。

イベントの参加方法と試飲の楽しみ方
まずは入口で、グラス(5ユーロ)を購入。このグラスを片手に、広場に並ぶ11のワイナリーブースを自由に巡り、それぞれのチャコリを試飲していきます。チャコリには3種類の特産ワインがありますが、今回のイベントはすべてゲタリア産、つまり「ゲタリアコ・チャコリーナ」に属するワインです。
ロゼタイプも提供されており、おかわりOKのブースもあるなど、ワイン好きにはたまらない仕組み。どれも個性がありながら、共通しているのは「ミネラル感」「爽やかな酸味」「微発泡の軽快さ」といった、ゲタリアのチャコリらしい特徴です。


印象に残ったチャコリたち
ここでは簡単に紹介していますが、より詳しい情報を知りたい方は、ぜひ「おすすめチャコリ10選」をご覧ください。

バランスの良さが際立ちます。フルーティーで爽やかな味わいが絶妙。上質な白ワインとしても楽しめます。「すっぱいのは苦手」という方にもおすすめ。現地の特産品とワインを楽しめるワイナリー見学には、ファミリープランもあり、家族連れに一押しです。

スタイリッシュな細身ボトルにふさわしい、モダンで洗練された味わい。繊細な酸味が、ジューシーな豚の丸焼きと驚くほどマッチ。デザイン性の高いワイナリーは、注目の観光スポットでもあります。

美食好きの地元民たちも一押しの高品質チャコリの代表格。「これがチャコリ!?」と驚かされる味わいです。華やかな香りと味わい、口の中に広がる生き生きとした泡。特別な食事と合わせて楽しみたい一本。併設のレストランでは、ブドウ畑をながめながら、よりすぐりの地元食材で作られた料理を楽しむことができます。

白とロゼがありました。
白:塩気やほのかな苦味が心地よく、抜群のバランス。
ロゼ:ほどよいボディでボリュームある仔牛のピンチョスとも好相性。
ワイナリーには、地元の老舗レストランのシェフが手がける炭火焼レストランがあります。

はじけるようなフレッシュ感が印象的で、まさにゲタリアのチャコリらしい味わい。アウトドアやバーベキューに大活躍しそうです。なんと大阪のエキスポにも出店予定とのこと。機会があればぜひお試しを!
そのほか、ゲタリアのチャコリとえば外すことのできない「イナシオ・ウルソラ」のブースも大盛況でした。気になる方はワイナリー訪問時のレポートがありますので、ぜひご覧ください。
美食も主役──ピンチョスとライブ調理
入口で購入できるピンチョスチケット(1枚2ユーロ)を手に、目の前でじっくり焼かれる豚と仔牛の丸焼きを楽しめます。村中に立ちのぼる香ばしい匂いと、ジュウジュウと音を立てて焼かれていく肉を眺めながらチャコリを楽しむ幸せな時間。
ピンチョスは想像以上にボリュームがあり、パンに挟んで特製サンドイッチにするのもおすすめ。ジューシーな肉の旨味を、チャコリの酸味が見事に引き立ててくれます。



イベントを通して見えたバスクの姿
今回、「チャコリの日」に参加して驚いたのは、チャコリのクオリティの高さ。かつての「軽くて若飲み向け」という印象をはるかに超える、世界に誇れる白ワインばかりでした。
そして何より印象的だったのは、このワインが地域の人々に深く愛されていること。ビジネスとして世界に輸出される一方で、こうして地元のイベントで新酒が振る舞われる。その姿勢に、バスク文化の真髄──「伝統と革新の共存」──を感じました。
日本の皆さんへ
春の食卓に、一本のチャコリを迎えてみてはいかがでしょうか。
山と海に囲まれたバスクの景色、美味しい料理と陽気な人々の笑い声が、グラスの向こうに広がってくるかもしれません。