バスク・イディアサバル村のチーズ祭りに潜入!現地で味わう伝統チーズ

はじめに:バスクとイディアサバルチーズの魅力

スペイン北部、バスク地方——美しい緑の山々に囲まれたこの地は、独自の言語と文化、そして豊かな食の伝統で知られています。

中でも、羊のミルクから作られるイディアサバルチーズは、羊乳のコクとバランスのとれた味わいが特徴の、この土地を代表する味覚のひとつ。

その名前を冠したイディアサバル村では、毎年春の終わりに、その年に作られた新しいチーズのお披露目として「チーズ祭り」が開催されます。

たくさんのイディアサバルチーズを食べ比べできるのはもちろん、羊飼いや職人たちの伝統文化に触れる貴重な機会でもあるこのイベント。「これは行くしかない!」と意気込んで、行ってきました!

🧀 まずはイディサバルチーズについて詳しく知りたい方はこちら

イディアサバル村チーズ祭りとは?

イディアサバル村のチーズ祭り(正式名:Gazta azoka)は、毎年5月初旬に開催されるイベントです。村の広場には、冬から春にかけて作られた、今季初のチーズを披露する地元の生産者たちがずらりと並びます。

イディアサバルチーズをはじめ、ピレネーで作られるバスクチーズ、さらにはスペイン各地やポルトガルなどのチーズ生産者も参加。**バスクの枠を越えた「チーズの祭典」**となっています。

イベントは二日間にわたり、内容も盛りだくさん。
たとえば:

  • チーズ作りと関係の深い「コハダ (羊乳を固めた素朴なデザート)」のコンクール
  • 羊の放牧パフォーマンス
  • 出店したチーズの人気投票
  • 伝統的なチーズ作り・燻製の実演
  • 靴作りや鉄の鍛造といった職人技のパフォーマンス (子どもたちが大喜び!)

子どもから大人まで楽しめる内容で、村全体がチーズ一色に染まる週末です。

会場は、石造りの建物と緑の山並みに囲まれた美しい村の広場。通りにはバスクの伝統衣装を着た人々、民族音楽の生演奏、色とりどりの出店などが立ち並び、村全体が華やかな祭りの空気に包まれていました。

イディアサバルチーズ祭り会場入り口付近の様子
会場入り口付近。村の広場は、“チーズの都”に変身!
イディアサバルチーズ祭りのテイスティングイベント
広場ではヨーロッパ各地のチーズとワインのペアリングレッスンも開催。

五感で味わうバスクのチーズ文化

■ チーズの試食体験

まずはお目当てのチーズブースへ!入口でチケットを購入すると、各ブースでミニピンチョスのようにバゲットに載せられたチーズを楽しめます。

今年できたばかりのフレッシュなチーズは、ミルキーでマイルド。まるで青草の香りが漂うような味わいでした。

熟成タイプは、旨味が凝縮されていて、スモークされたものは深いコクと香ばしさが絶妙。生産者ごとの個性もはっきり感じられます。

イディアサバルチーズ祭りでチーズのピンチョスが並ぶ店先
熟成具合やスモークの有無によって、味わいは驚くほど多彩!写真のピンチョスはイディアサバルのスモークタイプ。

さらに会場では、チャコリシードラ (バスクシードル)、赤ワインも販売されていて、飲みながらの試食で、さらに食が進みます。

バスクシードルを注ぐ様子
シードラ (バスクシードル) の注ぎ方は必見。

また、バスク外のチーズも多数出展されており、ローズマリーやパプリカパウダー (乾燥させた赤トウガラシを粉末にした香辛料) をまぶした個性派、ブルーチーズ、牛乳のチーズなど多種多様。バスクに住んでいると普段食べるのは地元チーズばかりなので、こうした機会はとても貴重!

地元周辺の参加者が多いようでしたが、実際、知り合いともバスク外チーズのブースでよく遭遇しました(笑)

イディアサバルチーズ祭りのポルトガルチーズのブースの様子
普段なかなか食べられない、他地域のチーズとの出会いも楽しい!

■ 生産者との交流

あるブースでは、生産者のお兄さんが「これを食べたら元気が出るぞ〜!」と、子どもたちに熟成チーズを発酵させたガスタ・サハラのピンチョスを振る舞ってくれました。

また、ほかのお店でも、好みでチーズを温めてくれたり、特大サイズのチーズサンドイッチをその場で作ってくれる様子は、まるでその家に遊びに来たかのような温かさ。こういう交流こそが、この祭りの最大の魅力かもしれません。

イディアサバルチーズ祭りのオッソ・イラティのブース
フランス側ピレネーで作られるバスクチーズの「オッソ・イラティ」も。チーズサンドイッチは食べ応え抜群でした。

■ チーズのお土産も充実!

気に入ったチーズは、その場で購入もできます。カット済みの小さなサイズも豊富なので、お土産にもぴったり。

今回はあまりに試食でお腹いっぱいになってしまい、購入までは至りませんでしたが……次回はきっと!

■ 村の風景とチーズの文化

イディアサバル村には、羊やチーズにまつわる展示や博物館、銅像などが点在しており、普段から羊飼いとチーズ文化が根付いていることが感じられます。

5月は、ちょうど山での放牧が始まる季節。山肌に広がる羊の群れを眺めながら、羊飼いの暮らしや自然の恵みに思いを馳せると、目の前のチーズにもまた深みが増す気がしました。

草原とバスクの羊ラチャ種の群れ
チーズの裏には、自然と人の営みがしっかりと息づいている。

バスクワインと伝統グルメのペアリング体験

地元の**微発泡白ワイン「チャコリ(Txakoli)」**は、イディアサバルチーズとの相性抜群!軽やかな酸味がチーズの塩気を引き立ててくれます。

また、赤ワイン派には、軽やかなチーズの味わいとマッチする、バスクワインの定番「リオハ・アラベサ」の若い赤ワインもありました。

※ワインとチーズの詳しいペアリングについては、別記事で紹介しています → 🍷イディアサバルチーズの楽しみ方はこちら

さらに、自家製パン、タロ(トウモロコシ粉のクレープ風)、バスクチーズケーキなど、バスクグルメも勢ぞろい!とにかく、食が好きな人にはたまらない2日間です。

手作りパンが並ぶ様子
知人が購入していたパンに惹かれ、お土産に。家でアンチョアのビネガー漬けや春キノコと美味しくいただきました。

まとめ:チーズと人の温かさに触れる旅

イディアサバルチーズ祭りは、単なる「チーズの試食イベント」ではなく、この土地に息づく暮らし、文化、人々の温もりを感じられる特別な体験でした。

チーズやワイン好きの方はもちろん、旅に「味」と「出会い」を求めたい方にも心からおすすめしたいイベントです。

もしバスク地方を訪れるなら、ぜひ5月のこの時期を狙ってみてください。
きっと、チーズの奥深さとバスクの人々の優しさに魅了されるはずです。

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